和魂凡才 2006年07月
和魂洋才の人・榎本武揚を主に、幕末関係の話や本の紹介をする凡才人のブログです
アラミスと呼ばれた女
宇江佐 真理
潮出版社 (2005/12)

時は幕末、主人公・お柳は長崎・出島で通詞をしていた父・平兵衛にフランス語を学び、フランス語の通詞になるという夢を抱く。父を攘夷党に殺されたお柳は江戸へ戻り、そこで長崎でも馴染みだった榎本釜次郎に再会し、「フランス語の通詞になれ」と言われ、男装して幕府脱走軍と共に箱館まで行動を共にする。
宇江佐さんの小説は始めて読みましたが、とても読みやすかったです。
お柳は著者のオリジナルのキャラクターかと思いきや、モデルがいたようです。実はたまたま同時期に並行して子母澤寛氏の「行きゆきて峠あり」を読んでいました。(←同時に読むなよ)こちらにもフランス軍人の世話をする役として、元芸者のお勝という男装した女性が登場します。著者の宇江佐さんは「アラミスと呼ばれた女」の参考文献として同じ子母澤寛氏の「ふところ手帖」を上げられていますが、この中の「才女伝」のお勝がお柳のモデルのようで、出てくるエピソードもほとんど一緒。そのお勝とブリュネのスケッチに出てくる「初めて会ったフランス語を話す日本人ジツタロウ(通称アラミス)」を繋ぎ合わせたようです。確かに残っているブリュネのスケッチの人物は面立ちなんか女性っぽいんですよね。

物語はお柳の視点で書かれていて、1人の女性の数奇な人生を描いたという点ではまぁ面白かったのですが、ずっとひっかかることがあって。

私にとっての興味は榎本さんがどう書かれているかです。ここに登場する釜次郎は「武揚伝」や他の榎本さんの小説の優等生的な人物として描かれていた釜次郎とはちょっと違います。ちょっとずるい男って感じがします。チャキチャキの江戸っ子の所は好きなんですけど。

で、何がひっかかってるかと言いますと、榎本さんの奥さんのことでしょうか。榎本さんはオランダ留学から帰国直後に多津さんと結婚するわけですが、お柳と再会した頃って、めちゃくちゃ新婚なワケですよ。しかも、幕府が瓦解しちゃって大変な時期でほとんど開陽に詰めてて、家にもあまり帰ってない。多津さんは慣れない婚家でお義母さんの世話とか一生懸命してるんですよ。榎本艦隊が脱走したら脱走したで「賊の家族」とか言われて世間から白い目で見られるってのに、釜次郎ったら!!
お柳に気を遣っているのか、または照れているのか、仕方なく結婚したみたいな言い方をしたり、お柳と深い仲になったり。もともと2人はどこか惹かれあうものを持っていたんでしょうから、そういう仲になったのは当然の事なのかも知れません。でも奥さんだって本当は一緒に蝦夷に行きたいと思ってるのに、一生懸命家を守ってるのかも知れないじゃないですか。なのに…。
お柳が長崎に行くからと、榎本さんに別れを告げに行った時も、情が深い人なのでお柳に対する最後の愛想なのかも知れませんが、母、姉の次にお柳というのはどうかと…。当時の人は自分の奥さんを褒めるとかしなかったんでしょうかね。それとも心は本当にお柳の方にあったんでしょうか。
その辺がどうも読んでる間中ひっかかっていて、その度にお柳に榎本さんの気持ちを弁護されると、私には男心が解からんのかしらと思ったりして。

私はどうも、女性が男装して男の人を追いかけて箱館戦争に加わる話って、あまり好きになれないみたいです。伊庭八郎を義妹の礼子が追いかけてくる真野ひろみさんの「雨に紛う」とか、富樫倫太郎さんの「美姫血戦」とか。なんでだろう…「ベルサイユのばら」は好きなくせに(笑)いくら男のフリをして「戦えます」って言っても結局土壇場では「女」が出てしまうからでしょうか。それとも「戦争」という命の遣り取りの中に恋愛を持ち込むからでしょうか。

あぁ、でも鹿鳴館の仮装舞踏会での榎本さんはカッコよかった


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【2006/07/25 03:16】 | 榎本さん本
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